のんびりママの日記です


by sakurako6500
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海の仙人

今日は、雪が溶けています。
ようやく、やっと、暖かくなって行くようです。

シクラメンも元気で咲いています。
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海の仙人  糸糸山 秋子

163ページの薄い本です。
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いい本なのです
文庫に書かれている粗筋を、書きます。
宝くじに当たった河野は会社を辞めて、碧い海が美しい敦賀に引っ越した。
何もしないひっそりした生活。そこへ居候を志願する、役立たずの神様
ファンタジーが訪れて、奇妙な同居が始まる。
孤独の殻にこもる河野には、二人の女性が想いを寄せていた。
かりんはセックスレスの関係を受け入れ、元同僚の片桐は片思いを
続けている。芥川賞作家が絶妙な語り口で描く、哀しく美しい孤独の三重奏。

  
    出てくる言葉におもしろいがあります。

「あのさ、偽善と同情は違うんだよ」

「同情が嫌なのは、てめいの立っている場から一歩も動かないで
することだからだろ。
でも、偽善はさあ、動いた結果として偽善になっちゃんなら、
いいんじゃないの? しょうがないよ。
そのとばっりは自分にくるわけだし」

「 幸せってなんだ 」
「 ありのまま、を満足すること。」

「孤独ってえのがおもそも、心の輪郭なんじゃないか?
 外との関係じゃなくて自分のあり方だよ
 背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ。」 

かりんは、いつもおなじコースに柔らかいカーブの球を投げてきた。
河野が見逃しても動揺することはなかった。
腹が据わっているのだ。


片桐は、違っていた。
彼女は、気持ちを隠そうとはしなかった、ストライクゾーンを一杯に
使って直球を投げてきた。
喜怒哀楽をあらわした。

「何かすることは前にすすむことなのか?」
「自らが自らを救うのだ」
生きていく限り人間は進んでいく。死んだ人間は置いて行くしかないのだ。
かりんは、それをうらまないだろう。
がんばって、と言うだろう。  

河野は、チェロををはじめることを思い立った。
チェロは人の声に近い音程なので心が落ち着くときいたことがある。
河野もはなしかけるように弾いた。
やがてチェロは、河野にとって最も豊かで奥深い話し相手になっていった。

「貴様は、どこで失明したんだ?」
「ここや。雷にうたれた。一年くらい前や」
「よくも命があったものだな」
「もう二度目やで。雷にうたれたのは」

「カッツオ!きたよー。カッツオー」
女は叫びながら浜に降りた。
砂に歩きなれない靴のかかとをとられながら、不規則な
歩調で海の方へ歩いてくる。
その足音も声も確かにきこえたはずの河野は、
チェロを引き続ける。

初冬の空には雲が低く垂れ込め、海は鈍い色を空に写していた。
西の方に雷雲を含んだその空は盲目の河野が肉眼で
最後に見た光景と同じものだった。

この最後を読むと、二人は結びつかないように思われます。
幸せと孤独、考えさせられるように書かれています。
他人の心の領域を、侵さないようにお互いの関係が上手く表現されているので
読後感がいいです。


 
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by sakurako6500 | 2010-02-25 14:33 |